山岳環境

・山岳と里山の自然環境保全
・野生生物のトラブルの未然防止
・野外活動に関する安全管理
 
 3項目を目的としてNPO法人アース・ウインドは2000年6月にスタートしました(2015年4月からはアース・ウインド)。
 山岳環境保全に関した活動が中心的なものになりここで紹介します。
 

トイレブース

 アポイ岳と羅臼湖、ルート上にトイレブースがあり利用できます。
 笹に潜ってトイレするのは大変ですが、ブースがあればキレイに使えます。
 携帯トイレを持参して利用しましょう。

 

 

大雪山トムラウシ山に避難小屋の設置をしないでください

 
環境省
北海道地方環境事務所 所長
     吉井 雅彦  様
 

2009年10月30日
NPO法人 アース・ウィンド   代表 横須賀邦子
 
大雪山トムラウシ山に避難小屋の設置をしないでください
 大雪山中央部に位置するトムラウシ山は、山頂への道のりが長く、多くの高山植物や、小川のさまが美しく、岩の重なる天然の日本庭園のような場所がちりばめられている山です。山の景観が美しいうえに、長く遠い道のりで容易に訪れることができないため国内有数の人気の山です。
 2009年7月トムラウシ山遭難が発生し8名もの命が奪われました。この遭難を受けて、新得町からは新たな避難小屋の設置が必要との要望が出された旨が新聞各紙で報道されました。縦走でのツアー最終日にトムラウシ山が位置する関係で、一日の行程が長かったことがこの遭難の一因であったとの判断からのようです。
 北海道の山岳環境保全を目的とするNPO法人アース・ウインドとトムラウシ山の自然に長く親しんできた私達登山者は、避難小屋設置を希望しません。その理由を以下に述べます。
(この意見書は、北海道森林管理局、北海道、新得町、新得山岳会の4機関に提出いたします。)
 
 
避難小屋設置反対の理由
(1)自然の保護を第一に考えます。
 利用には、一定の歯止めがあって当然で、国立公園の主旨はすばらしい自然を守ることが第一の目的です。それを害さない範囲で利用されるべきと考えます。現在のトムラウシ山のコース状態は、自然の保護と登山者数の兼ね合いがほどよくコントロールされています。
(2)避難小屋はトムラウシ山の奥深い景観を変化させます。
 原始的で奥深く不便だから山の神秘性があると考えます。北海道の財産として今のままにしておいてください。
(3)安易な登山者が増加することが予想されます。
 避難小屋を設置した場合、今まで登れないとあきらめていた登山者の利用が予想できます。軽装のトムラウシ登山者が増加し、トラブルの未然防止につながらないと考えます。
 
 
 
反対意見の趣旨
 避難小屋は宿泊用小屋ではありません。しかし登山者の殆どが小屋利用の登山計画を実施している現状があります。そもそも本来の避難小屋としての利用は、現状では無理があります。避難小屋と宿泊用小屋の目的の違いを、設置・管理する側も登山者側も認識を整える必要があると考えます。また、避難小屋周辺の野営地やトイレ設置などの課題を含んでいることをも考慮して、避難小屋の位置づけの整理を希望します。
 避難小屋が設置された場合、今までトムラウシ登山をあきらめていた中級以下の体力レベルの登山者でも、登れる可能性が出てくるかも知れません。となれば、全国からの登山者が増加するでしょう。登山技能が低い登山者が多くなることの危険性を考えれば、避難小屋設置が遭難の未然防止になるとは考えられません。さらに避難小屋利用の増加は、トイレの設置、野営地の管理に問題は拡大し、周辺の高山生態系に変化を生じさせる懸念が強くあります。これらの理由により避難小屋設置について反対します。
 
避難小屋設置を仮定した場合
■現在の状況から、登山者のコース利用変化を考察する
利用主体別に3つの分類
A日帰り一般登山者(単独登山者・グループ同好会等登山者)
B日帰りツアー登山者(団体旅行登山者)
C縦走登山者(一般登山者と団体旅行登山者)
避難小屋ができた場合の行動経路予測
A日帰り一般登山者(道内在住)は山上宿泊が多くなる。
温泉に宿泊しない節約型が増加する。東大雪荘の利用は減少し、避難小屋利用が定着する。
B日帰りツアー登山は山上宿泊をしない。
団体旅行登山者は寝袋等を背負う形態の登山スタイルを選択する可能性が低い。従来どおりトムラウシ温泉に前泊と後泊をする。
仮定:将来、扇沼山コース利用の増加が見込まれる。
C縦走登山の場合、トムラウシ周辺の山上宿泊が多くなり温泉宿泊は減少する。
       縦走の最終日に体力の余裕がなくなるため、避難小屋に休むことを前提とした行程に変化しトムラウシ温泉に宿泊せず空港直行となる行程変化が生じるだろう。さらにトムラウシ山を下山したあと温泉日帰り入浴で休憩し、空港へ直行となるコースが定着するのではないか。新得側に下山する必要がなくなるだろう。
 
 
 
NPO法人 アース・ウィンド 代表 横須賀邦子
〒069-0813 北海道江別市野幌町30番地の1
TEL/FAX 011(381)9233 
Email; Yokosuka@e-wind.org
携帯電話;090-7645-7199
 
 
参考資料
①2009年  9/14十勝毎日新聞 
http://www.tokachi.co.jp/news/200909/20090915-0002743.php 
 【新得】定例会は14日、6人が一般質問を行った。大雪山系トムラ 
ウシ山(2141メートル)で発生した中高年のツアー客ら8人が死亡 
した遭難事故を受け、浜田正利町長は事故後に明言していた、国に避難 
小屋の増設などを求める要望書の提出について、7月末に行ったことを 
報告した。 
 2010年度国立公園等整備費の概算要望調査で、環境省直轄事業と 
して実施するよう要望。具体的には(1)南沼付近への避難小屋とトイ 
レの設置(2)3カ所の登山口に注意啓発看板の設置(3)登山道(ト 
ムラウシ山線歩道のカムイ天上?コマドリ沢)補修?の3件。道にも同様 
の内容で提出しており、浜田町長は「今後も山岳関係者と意見交換を進 
め、地元自治体として声を出していく」とした。廣山輝男氏への答弁。
 
②岳人 2009年10月号
 

 
(2012年4月5日)
 

ステッキは標準装備ではない

1ステッキは登山者の標準装備になったかのごとく、誰もが持ち歩くようになりました。膝の痛みを軽減するための使用や、怪我予防の意味で購入するか、はたまた登山道の凹凸や石ころ、滑りやすい裸地、雪渓の登下降に、頼れる存在としてずいぶん普及しました。

 アスファルトに慣れた都会人が、でこぼこの登山道をスタスタと歩けるまで誰方でもしばらくかかることでしょう。そんなときステッキは魔法の杖として登場し、まさしく手となり足となって登山者を助けます。こうなるとステッキは欠くことのできない装備と思われがち。でもちょっと待って、ここで考えてみましょう。
 
 ステッキをつくところ、たいていは同じ場所に幾重もの穴を開けます。やがて土は砕けて崩れます。高山植物群落の間を通過する昔からの登山道は、崩れが加速し登山道は抉れて深く広い登山道に変貌します。ここに雨が集中して川の様になって更に道は深くなり侵食は止めることができなくなります

 
 ステッキを突いて登るときあなたはどこに視点を持っていますか?
・ 至近の地面
・ 少し先の登山道
 至近の地面をみていたら、それは次のステップへの踏み出し判断が遅くなり、バランスをとる反応にも影響が出ます。正解は「少し先の登山道を見よう」です。ステッキを持っていると地面につくために上体は少し前かがみになり、遠くが見られません。
他にも、急な段差で心臓より高いところにエイヤっと腕を上げ、杖に頼って身体を引き上げる苦しい動作を繰り返していませんか。下山の道で手首にステッキの手皮を通したまま、長い杖を下の低い地面についてから、踏み出す足をドシンとおろしてはいませんか?もし、あなたがこの一つでも経験があるとしたら、それはこれから老後を迎える私たちの運動能力の中で減退しやすい能力「バランス」を欠くことを加速します。使い慣れてしまったステッキバランスはしっかり身についてしまい、使わないで歩くのは難しくなります。ステッキを使わない練習にトライしましょう。矯正に2年はかかるでしょうから、気長に取り組んでみてください。
 
 人は胸をまっすぐにして立つとき、遠くまで視界が広がり、膝を上げやすく、すり足で歩く動作を防ぐことができます。だから、つまずきを防ぐことになります。つまずきがきっかけとなる転倒を防ぐために、ステッキに頼らない歩き方を工夫しましょう。
 
■ 備 考 
その1、筋力確保:膝を引き上げる動力は大腿4頭筋、ママチャリに乗って腿の筋肉を鍛えよう。

自転車漕ぎは登山と同じ筋肉を使いますが、歩くより体重移動の負荷がすくなくトレーニングできます。筋力を徐々に高めていくことで、膝軟骨の炎症や痛みを防ぐことができます。
その2、バランス感覚を磨く:引っ張らずに地面を押さえる支点の使い方をする
下山時、周囲に笹薮などがあればその根をまとめて掴みます(草などは抜けたり切れたりするのでくれぐれも掴まないように注意しましょう。)両手をそっと地面に置いて腰を下へ移動させると安心感もあるしバランスを保つことができます。
その3、クールダウン:筋肉を酷使したらクールダウンで疲労回復。
思ったより身体が硬くなるのが登山活動の特徴、運動後は整理体操でほぐしておき、温泉に入ったら出る直前に腿やふくらはぎ、膝、足首に冷たい水をかけます。膝や腿の筋肉の血行を活発にして疲労成分を取り除くのを早めます。
(2007年7月20日)